肥満と遺伝は関係があるのか?

私たち人類の祖先は、数百万年に渡り、厳しい自然環境と戦いながら今日まで生き抜いてきました。特に飢餓による淘汰を乗り越えてこられたのは、優れた消化・吸収能力によって、わずかな食物からでも最大限のエネルギーを摂取し、さらに余分があれば中性脂肪の形に変換・圧縮して全身に分布する脂肪細胞に蓄えると言う効率的なメカニズムを獲得できたからです。

私たちは基本的に飢えに強い体質を受け継いでると言えます。しかし、この効率的で素晴らしいエネルギー摂取能力や保存能力の高さがかえって災いし、食べたいものが容易に入る飽食の時代になると、逆に肥満を招く大きな原因になってしまったのです。このように私たちは、そもそも太りやすい体質を先祖から受け継いでいると言えます。

親子を対象とした肥満調査によれば、両親とも正常体重である子供の肥満率は全体の約10%であるのに対し、親の一方が肥満なら子供の約50%が肥満になり、両親が肥満の場合は、子供の約0%が肥満になるという結果が出ています。この結果を見る限り、肥満には何らかの遺伝的な要因が深く関係してるように思われます。

事実、遺伝子研究の進展によって、肥満を抑える働きを持つ数種の遺伝子が発見されています。

こうした遺伝子に欠陥があったり、食欲を抑える物質を感知する能力に異常があると肥満になると考えられています。

エネルギー摂取と消費バランスを調整する働きを持つ「レプチン」というたんぱく質を作る遺伝子もそうしたものの1つです。中でも脂肪をエネルギーに変換する際に動く「β3アドレナリン受容体」と呼ばれるたんぱく質を作る肥満抑制遺伝子については、日本人の約40%に異常が見られると報告があります。

つまり、日本人の約40%は遺伝的に受け継がれている体質から肥満になりやすく、食事制限やダイエット効果がなかなか表れにくい体質を持っているということになります。

近年、子供の肥満化が進んでいます。これは日本の食生活が欧米化し、高脂肪食品を多く食べる事になったからです。さらに、外で遊ぶ機会が減り、運動不足になったり、塾通いなどにより食生活自体も不規則になりがちです。このような事が子供の肥満を増加させているのです。そして、子供の肥満は将来、心臓血管障害につながる危険性があります。